幼馴染

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「そうか……」  上司の事、その後のユージィンとの逢瀬。 涙ながらに事の顛末を告げた女を、男は痛ましそうに見つめた。 (好きになっちまったんだな、ソイツの事を) 自分の胸の痛みには蓋をして、眼の前の女に話しかけた。 「敦美、その下司上司を警察に訴える事は出来ない」  男の言葉に彼女は頷いた。 (本当ならば面相が変わるくらいに殴ってから、警察に突き出したかった) 野北の本心だった。しかし彼女自身が事実を隠蔽してしまったのだ。 「働き続けられるか」 問えば、激しく拒絶したので野北の肚は決まった。 「とりあえず俺は仕事に行くから、お前はこの部屋に居ろ」 テキパキと色々なものを、彼女の周りに置いていく。 「家にあるモンは何でも使っていいし、カップ麺とかしかないが食ってろ。ああ、夕飯は俺が買ってくるから、作らなくていい。何かあったら電話しろ。俺からも定期的に連絡をする」  幼子に言い聞かせるように伝えれば、彼女はコクンと頷いた。会社と携帯の電話番号を記して卓袱台の上においた。 「俺が出た後、ロックを掛けておけよ。宅配も新聞代の集金も出なくていい」 淳美は人形のように頷くのみだった。  野北は会社の会議に出席する時しか着ないスーツに腕を通すと、鍵を閉めて出て行った。
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