芽生え

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 検査薬が野北に見つかってしまったのは、偶然だった。 「っ、淳美! これっ」 「返してっ」 女は男から奪い返すと、ぶるぶると躰を震わせていた。野北は彼女の背中を凝視していた。小さな背中。頼りなげな身体。 「……生むのか」 静かな問に、淳美は頷いた。 何故か彼には、彼女の答えは訊ねる前からわかっていた。 「男に、連絡は取らないのか」 ユージィンの事を訊かれているのだと思った淳美は、ふるふると首を振った。 (あの人の名字も知らない。携帯番号すら) 今更に、そんな事に思い至った。 (そもそも、もう国内に居ないのかもしれない) 恋しい男が傍に居ない。身を千切られるような寂しさと心細さを感じた。
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