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「お礼を言うわ」
後に残っていた、夕人の妹が野北に礼を言った。
は、と男は吐き捨てるように嗤った。
「こちとら、アイツの尻拭いは慣れてる。アンタが気にする必要はない」
「わかったわ」
じゃあ、とくるりと女は背を向けた。待てよ、と野北が女に手を伸ばした。
「どうしてもって言うのなら、慰められてやってもいいんだけど? 」
精一杯、やさぐれた男風に軽めに言ってみた。果たして、女は軽侮の眼で野北を睨んで来た。
「お生憎様。私は貴方みたいな男は好みじゃないの。……そうね。ダッサい貴方を見て、お礼を思いついたわ」
後日、ダニエーレが精魂込めて誂えたスーツが野北の元に送られてきたのだった。
同封されていた、淳美とその子供の写真を眺め。
「さーて。この一張羅を来て、婚活パーティでも出かけて女でも引っ掛けてくるか♪」
……野北が最愛の恋人と出逢うのは、もう少し先の未来。
Fin.
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