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「アツミ……、アツミ」
男の穏やかでいながら熱く、甘い声が耳朶をうつ。
「綺麗だ……」
切れ切れに届く、掠れた声。
彼女は快楽の波を繰り返し打ち付けられ、深い悦の底へと運ばれていく。
「あぁ……」
彼の掌が彼女の躰を余す所なくなぞる。唇が彼女が反応を示す所に、落とされては舐められ啄まれた。
「あっ……はぁ……」
敦美は、どれだけ己がウットリとした声を出しているのか気がついてなかった。
そんな自分を、彼がどれだけ愛おしそうな表情を浮かべて見つめているのかも。男が眼差しの中に獰猛さを秘めているのかも。
「 Bella persona
(美しい人)
Ti ho folle
(僕は君に夢中になってしまったよ)
Ti amo、アツミ……
(愛してる)」
彼女の躰は柔らかく蕩け、熱い男の肌にしがみつくしか出来なかった。
「アツミ、僕の名前も呼んで」
ねだられて、敦美はうわ言のように男の名前を呼んだ。
「ユージィン、あ、あ。ユージィン……っ」
やがて男の舌と指が彼女の秘密の園にたどり着いた。今までと比較にならない快感が押し寄せて来る。
「アツミ、
Lasciami sentire la tua voce
(声を聴かせて)」
「あっ、あぁぁぁ……」
夕人は、敦美を何度も絶頂に押し上げる。
此処が何処であるのか。どうして彼と互いの熱と欲を分け合っているのか。そんな事は、どうでも良かった。
色鮮やかな歓びを教えてくれる、この男を。得難い宝物のように自分に触れてくれる、この男が。刹那の恋人だろうと構わなかった。彼女は慕わしさを込めて、ひたむきに抱き付いていた。
不思議だった。
腕の中で眠る淳美を見て、夕人は思う。
(今日出逢ったばかりで、一晩ベッドで過ごしただけなのに)
彼は彼女の唇に触れんばかりの距離で囁いた。
「アツミ。
Ti voglio bene
(君の事が大切になってしまった)
Sei tutto per me.
(君は僕のすべて)
Vorrei stare con te per sempre.
(君とずっと一緒にいたい)」
そっと、彼女の額にキスを落とすと、彼も眠った。
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