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眼が覚めると、淳美はこの部屋の住人が居ない事に気が付いた。
サイドテーブルにメモがあった。
『Buongiorno
(おはよう)、アツミ。
Hai dormito bene?
(よく眠れた?)
Per favore lentamente
(ゆっくりしておいで)
朝食を買ってくるから、待ってて
Yujiin』
(ユージィン……)
ベッドは微かに温かい。そして、彼のフレグランスが密かに薫る。
(この部屋に入った時には、こんな満ち足りた気持ちになれるなんて思ってもいなかったな)
それもこれも、あの男性(ひと)のおかげだ。
淳美はそっと、彼の温もりを感じるべくシーツに頬を寄せた。
微睡みそうになって、唐突に思い出した。
(そうだ、ストッキングを買ってこないと)
ゴミ箱から拾いだすのは嫌だし、伝染してしまっている。素足にパンプスとしゃれこんでみたいが、忽ちマメだらけになってしまうだろう。
(下のコンビニに行ってこよう)
きっと、ユージィンより早く戻ってこれるだろう。最悪、彼の方が早く帰ってきてしまったとしても、怒られないだろう。念のため、ユージィンのメモに書き付けておいた。部屋を見回したが、スペアキーは無いらしい。
(インターフォン鳴らせば開けて貰えるだろうし)
『おはよう。
コンビニに行ってきます。
戻ってきたらドアを開けてくれる?』
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