不平

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 つらつらと思考に溺れかけていた俺の耳に司会者の声が届いた頃には男性の再現VTRは終わっていて、スタジオで出演者たちが好き勝手に言い合っていた。 『孤独な日々でしたね。しかしこうやって周知されることで世間の理解も……』 『きっといい番にめぐり合えますよ』 『ひとりで苦しまないでください』  何度聞いてきたセリフだろうか。もちろん彼らは純粋な善意で言葉をかけてくれているだろう。今更、元の性について語ることなんかしたくないし、過剰な手助けも無用だ。  画面の向こうの男性もどうやら俺と同じ気持ちのようで、曖昧に笑うばかりだった。同じ境遇だからか、やけに親近感が湧いた。 『……今日僕がここにきたのは、全国にいる同じ境遇の方と話がしたいと思ったからです』  まるでこちらの状況を見ているかのようなタイミングで発せられた言葉にただただ驚いた。特発性性転化に罹患した者は必ず医師から、さらなる検査をしてみないかと言われる。入院費も入院している間の生活費も全て病院側が負担するという、身も蓋もない言い方をすれば、研究対象になってくれということ。     
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