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再会
翌日は朝から会議会議で、昼の時間もだいぶ過ぎた頃になってようやくいつもの業務に戻ることができた。
「桐ヶ谷さん、頼まれていた資料です」
「ん、ありがとう」
缶コーヒーを傾ける俺の横から新人社員がおずおずとファイルを手渡してくる。ファイルをめくりながら横目で彼をみるとどこか憔悴しているように感じた。
「どうした? なにかあったか?」
「え」
いきなり顔をあげて尋ねてきた俺に、新人は動きを固めた。視線が泳いでいる。どうやらデスクでは話しづらいことのようで俺はファイルを閉じて彼を休憩室に誘った。
「部長に叱られました……」
こんな時間に休憩をとる者は少なく、普段よりも閑散としている休憩室の窓際でカップコーヒーをその新人に手渡した途端、眉尻を下げてそう呟いた。
「ああ、なるほど。何かミスしたか?」
「……僕は作業が遅いと」
さっき渡されたファイルを思い出す。あの資料を頼んだのは昨日夜だ。
今日中にくれればいいと伝えていたから十分早く仕上げてくれたと思っていたが、事情をしらない者からはそうは見えなかったらしい。
「部長の愛情表現みたいなもんだって言っても、真面目なお前は真に受けちゃうよなあ」
「すみません……」
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