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叱っているわけでもないのに謝り続ける姿に彼の自信のなさを見た。真面目で謙虚なところは彼の美徳だがいきすぎるのはよくない。
「謝る必要はないぞ。お前はミスをしないように慎重に確実に仕事をしてくれるから、俺は助かってる」
「桐ヶ谷さん……」
温くなったコーヒーを飲むように促して、その肩をたたく。
「今はまだ仕事の早さは気にしなくていい。確実に間違いのない仕事ができればいい。もちろん、時間を気にすることも大事だがな」
「はい」
持論をべらべらと喋ってばかりで少し恥ずかしくなった俺は、彼のきらきらとした目線に居た堪れなくなってコーヒーを流し込んだ。
「注意されたことも忘れずな。社会人はやることも覚えることもいっぱいで大変だな」
「がんばります! ありがとうございます!」
なんとか元気を取り戻してくれた彼の背中を見送って、俺も自分のデスクに戻ることした。その道中、同期の男が声をかけてきた。
「悪い桐ヶ谷、この件の予算変更のことわかるか? 俺のところに全然情報入ってこねえんだけど」
「ん? ああ、メールで連絡きてたな。あとで転送するわ。営業担当にも伝えとく」
「助かる」
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