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現代では結婚と同義に扱われる“番”は特にアルファとオメガにとっては重要で、オメガが生殖可能時期になると起こるヒート期間(発情期)に発するフェロモンは自分ではコントロール不能で周りにいる他のアルファやベータ性を引きつけてしまう。生殖が主たる役割だと歴史上言われ続けたオメガの性である。
今は抑制剤や避妊薬もあるから自衛する手段はあるにはある。しかしそれでもヒートの発狂しそうなほどの熱と欲求不満は、完全には断ち切れない。
もしもアルファと番うことができれば、パートナーとなったアルファにしかフェロモンを発さなくなる上に、ヒート中の性行為によって期間そのものも短くなるらしい。
オメガ性の者はみんな、番を見つけるか、一生抑制剤で抑え込むかの人生の選択を迫られる。だからだろうか、少女漫画で聞くような“運命”という夢物語が語り継がれるのは。
俺はふと懐かしい光景を思い出した。弟の雅人がオメガバース性検査でアルファと診断された日の学校の帰り道。まだ仲の良かった俺たち兄弟は、手なんかつないで笑いあっていた。
「雅人は運命の番って信じるか?」
「うんめいのつがい? なにそれ?」
言葉の意味にピンときていない弟の、愛らしい声が弾む。俺は得意げになってクラスの女の子たちが話していた内容をそのまま口にする。
「その運命の番と結婚したら一生幸せになれるんだって!」
「すごいね!」
目をキラキラさせて笑った雅人に、どんな人がいい? なんて好奇心のまま尋ねた。
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