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他の人がくるなら先に連絡しとけ! と一之瀬を睨みつけるが本人はやはり少しも気にすることなく、当たり前のように壁一面ガラス張りでの窓際へ促した。
そこからはライトアップされたホテル専用の庭園が一望でき、庶民の俺には無縁の光景に少し見入ってしまう。
「さてと、酒でも飲みながら話そう」
「社長」
九重さんの制止を無視して勝手にあれこれと注文してしまうとようやくこちらに向き直って、不敵な笑みを浮かべた。
「……で、やっぱり昨日の話の続きなのか?」
「もちろん」
話が早くて助かると、隣の九重さんに目配せすると同時に彼女のバッグから幾つかのファイルが現れて俺の前に広げられた。
訝しみながらその内容に目を通す。そこに記載されていたのは一之瀬の会社についての様々な情報だった。
「おい。いいのか、これ」
「問題ない範囲の情報だ。どう思う?」
どうって言われても……と、二人の視線から逃れるように再び資料に目を落として読み込んでいると、首をかしげる点をいくつか見つけた。その原因を見つけるために別のファイルを手繰り寄せて頭の中で情報を整理して、辻褄を合わせていく。
追えば追うほど、思考の海に深く沈んでいく感覚があった。嫌いな感覚じゃない。
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