再会

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 それから一体どれだけの時間が過ぎただろうか、一之瀬に説明できるまで内容を整えたところで顔をあげると、テーブルの上にはすでに飲み物が来ていて一之瀬はおかわりを頼んでいた。 「え。あ、すまん」 「いんや、気にすんな。で、どうだ?」  どこか楽しそうに笑っている一之瀬に、疑問に感じた部分と、問題点、資料のミスを指摘して、最後に「お前の会社の資料じゃねえだろ、これ」と言い捨ててファイルを整えて九重さんに返却した。 「あっはっは!」 「おい」  堪えきれずに声を上げて笑う一之瀬に文句を言いながら、温くなったグラスを傾けていると、その隣の九重さんの視線に気がついた。 「あ、すみません。口悪くて」  てっきり一之瀬いん対する態度を咎められていたのかと思ったがどうやら違ったらしい。 「す、すごいです……!」 「だろ? こいつ昔っから頭はいいんだよ」  九重さんの感嘆の声に頷く一之瀬にいい加減タネ明かしをしろと、テーブルの下で上質な革靴を踏んづける。 「悪い悪い。仰るとおりこれは俺の会社の業績じゃなくて、一之瀬グループの末端会社の情報。もちろん俺がフェイク入れてるし資料のミスもわざとだ」 「なんでそんなこと……」     
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