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『我が国では12歳になったら体質的性別……失礼、分かりにくいですね。もっと親しみのある表現をすれば“オメガバース”ですね。このオメガバース検査で自分がアルファ、ベータ、オメガなのかを知ることになります。この検査は専門の機関によって精密に検査されますのでここで出た結果は99%間違いないと言われています』
司会者が一旦言葉を切って、新しい一般出演者が呼ばれた。そこでようやく俺は立ち尽くしたままだということを思い出して逡巡したあと、書類ではテレビと向き合うことに決めた。
『まずはご出演くださったことに感謝します』
『……こちらこそ、ありがとうございます』
体格からして男性だろうその顔もやはりモザイク処理をされた上で声も変えられていた。彼が椅子に座ったところで画面が切り替わり、再現VTR が始まる。
『Aさんは、オメガバース検査でベータと診断されました。しかし大学卒業を控えたある日、なぞの高熱で1週間寝込んだといいます。その際病院で血液検査で異常が出たと言われ、さらに大きな病院を紹介されました』
二人掛けのソファに腰を落ち着けた俺は震える手を押さえながら、まるで自分のことのようにそのVTRに見入っていた。
若い俳優だろう男性が不安そうに大病院の診察室で医師の言葉を待っていた。
ーーああ、そうだ。こんな感じだった。
『……あなたの体質的性別はベータで間違いないでしょうか』
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