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それから三日ほどたってから、曜が放課後に僕を近くの河原へと誘った。途中でハンバーガーを買い、二十分ほど歩いて、夕暮れの河原に辿り着いた。犬の散歩やジョギングしている人を避け、人気のない所に腰を下ろす。
曜は最初はいつもと変わらなかった。とりとめのない事を話し、よく食べ、よく笑った。
夕暮れも深まった頃、彼はぽつりと、聖司も聞いたよな、とつぶやいた。
「・・・さくらから別れてくれって言われた」
僕は黙って頷いた。
「好きな奴ができたんだって」
今度は頷かなかった。
曜は静かに、何かに耐えるかのようにしゃべり続ける。
「申し訳ないから、これ以上は付き合えないって」
「俺はそれでも構わないって言ったんだ。でも・・・」
「今までだってそうだったじゃないか、何が駄目なんだよ、何が違うんだよ。お前はこれでいいのかよ」
僕は、と少し詰まった。
「僕は・・・、彼女の好きなようにすれば、それで」
俺は構わないのに、と曜は顔を伏せた。両肩が小さく震えている。
僕は彼の肩を抱く事も、あいずちを打つ事も、何もできなくてただ隣に座っていた。
時々、強い風がごう、と鳴る。
春がもう近くまでやって来ている。
しばらくして曜がつぶやいた。
「好きな奴って知ってるか」
僕は最初で最後の嘘をついた。
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