第2章

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 地平線の彼方までひろがる背低の草原を、まるで定規を押し当てたかのごとき正確な直線で上下に截然して流れるオジャマッポ河は、ある地点で突然湾曲をはじめ、そのままぐるっと真円を描き切るかと思えば、その少し手前で行く手を戻し、もとの直線に従う格好で直流を再開する。ちょうど戯画化されたおモチの膨らみ、あるいはΩの字形を想起してもらえば良いだろう。ジャムオジとブンブクの親子が住むのは、このおモチの内側の一帯だ。  現代の度量衡にてらせば何百キロにもあたる長い距離を川がきれいに直進することのほうが不可思議であるが、我々の遠い祖先達にとってそれは、地平線が線をなすのと同じように、なんら不審の対象にはならなかった。それよりもΩの上、おモチのふくらんだ部分は、彼らのシンプルな頭脳を強烈な刺激でもって乱打した。斯様な形状は少しく隆起した地盤を迂回するうち自然と出来上がるものにすぎないのであるが、そういった事理を考究するには、頭蓋の容量という器質面でも、文字の発明による知識拡大という文化面でも、必要な条件がまだそろっていなかったのである。
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