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やがて陽が傾き、風が川べりの草々をなびかせはじめる。おぶいつづけることに疲れたジャムオジは、少し内地に入った地点に岩陰をみつけ、早めの寝支度にとりかかる。そこから五十歩先、立ち枯れの灌木をみつけ、薪のためと皮をむしりはじめる。その時、
ピイッ
とどこかで音がした。慌てて振り返ると、ブンブクもポカンと口を開けている。鳥だろうか。するとまた、
ピイッ
ジャムオジは嫌な予感がして戻りかかるが、目の先ではブンブク、葦袋からホネ笛出して、
ピュイッ
ピュイッ
真似のつもりで吹き出していた。
「やめなさい」
危険を直覚し止めにかかるが、
ピュイッ
ピュイッ
ピュイッ
ピュイッ
構わず続けるブンブク。すると岩の向こうから、一人、いや一匹の、なにものかが現れた。
極度に小柄で、毛の薄く、ふくらんだ胸には一筋の縮毛も見られぬその何物かは、片手にホネ笛そっくりなものを握り、そして、二本の足で立っていた。
「おまえ、なんなんだ?」
無意識に放たれたジャムオジの問いかけは、そのものにとって何らの意味も結ばぬようで、不自然に丸く大きい栗色の瞳ばかりがときおり左右に震えていた。怯えているようだった。
ピュイッ
ピュイッ
ピュイッ
ピュイッ
みじろぎしないまま立ち尽くす両者に構わず、ブンブクがホネ笛を吹き続けた。そしてそれが十回程続いたとき、そのものはゆっくり肘を曲げ、だが栗色の目は依然ジャムオジへ向け開かれたまま、自分の笛を吹き返した。
ピイッ
ピイッ
ピイッ
ピイッ
ピュイッ
ピュイッ
ピュイッ
ピュイッ
己以外に初めて笛持つ者を見つけたブンブクはけたたましく笑い、そのものもブンブクになぞるように、笑った顔をつくる。
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