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現れた“彼”は、記憶にある範囲で同じような姿をしていた。
頭に生えているのはウサギの耳だっが。
それも黒兎の耳で、“彼”自身のイケメンさとも重なって大変なことになっている。
笑いを必死にこらえた僕だが、そういえば“彼”には以前、猫耳女の子が可愛いと喜んでいたら猫耳をはやされて散々耳や尻尾を弄ばれた記憶がある。
黒髪に茶色の猫耳だった記憶がある。
そして今も茶色い猫耳だった。
「あれ? なんで同じなんだろう? この茶色い猫耳が好きなのかな?」
「……クリームパンを一つ」
「あ、はい。いつもありがとうございます」
そう言うと、“彼”は僕から顔を背けて、
「べ、別に……ただ、お前の作ったクリームパンが好きなだけだ」
「! そうなんだ。作り甲斐があるかも」
僕はそう答えながら、クリームパンを一つとって持っていき、袋に入れる。
そういえば、以前も“彼”に料理を作ってあげたらとても喜んでくれた記憶がある。
やっぱり“彼”なままだなと僕が思っているとそこで“彼”が、
「それで今日も“西の森”に行くのか?」
「うん、あそこで必要なものがあるから」
「……魔物が多くて危険な場所だぞ?」
「でもあそこに必要な材料があるから。あ、この前は助けてくれてありがとう」
そう返す。
実はこの前、“西の森”にやってきた僕は“彼”に助けられたのだ。
すると、
「……たまたま通りかかっただけだ。……代金」
そう言って僕の目の前にお金を置いて、ありがとうございます、という僕の言葉を聞くや否や照れたように店を出てしまったのだった。
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