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まるで中世の魔女裁判だ。思うままに誰でも罪人にできてしまう。それが、信じられないことに現代の日本において、白昼堂々野党やマスコミが自国の首相をこの論法で糾弾しているのだ。 こんなことが許されていること自体、加瀬首相は独裁者でも何でもなく、かつ我が国が自由かつ平和であることを証明していると思うのだが。
ただ、年下の私からいくら説明されても、このクリーニング店主は絶対に納得しないだろう。彼らの世代にとって新聞とテレビが言うことは絶対なのである。不毛な議論をしても仕方ないので、私は適当にあしらって話題をプロ野球に変えた。これならひいきチームが同じなので当たり障りのない会話になる。やがて水野の爺さんは上機嫌で店を後にした。
「大変でしたね」
やれやれと思っていると、カウンターで水野の向こうにいた初老の男性から声をかけられた。初めて見る顔だ。
厨房で料理していた店主がおやっという表情で私に言った。
「あれ?山田さん、須賀野さんに会うの初めてでしたっけ」
「いや、私が久しぶりに来ましたからね」
須賀野と呼ばれた男性は品良く笑った。着ているスーツはかなり上等なようだ。企業の重役など、それなりの地位
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