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Scene01『囲まれた未確認生物たち』
「ッあ……やめ…………っぎゃああああああああアアアああああああああっ!!!」
激しく痛めつけられ、喘ぐ男が一人。無表情で淡々と苦痛を与え続ける男が一人。それを見て沸き立つ観客が五万人。
プロレス団体『A.A』代表の「グレ」は同じくプロレス団体『B.B』のエース「フカ」に良いようにやられていた。分かりやすいと弱者と強者の構図である。
関節技を極められてはロープに逃げ、解放されたらリング中央までひきずられてまた技を極められる。腕十字の次はアンクルホールド、その次はスリーパーホールド、その次はサソリ固め、そしてハーフネルソン。
――――――遊んでやがる。
分かっていても何もできない自分の無力をグレは恨んだ。フカの技が極まってグレが悲鳴を上げるたびに超満員の観客が『B.B』コールを轟かせる。
超満員のアリーナは、公開処刑の場と化していた。いくら人権屋が有害だ悪影響だと騒いでも、人間の本能は暴力や異物の排除を求めている。それが合法的なショーなら問題ない。
プロレスはそういうビジネスなのだ。
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