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プロローグ
俺の本能が、彼から逃げろと言っていた。
実朝さんとは正反対。
強烈な悪意で睨んでくる彼が、俺は怖かったし好きではなかった。
けれど、抱きしめられる。触れてくる。
「嫌いなわけじゃねえよ。分かんねえのかよ」
押し付けられたのは胸の鼓動じゃなくてなぜか下半身で――?
「滅茶苦茶、好きなんだけど」
熱い刺激に目を見開く。信じられない。
「――好きなんだけど、聞こえてる?」
もう一度そう言われて、俺は横に何度も首を振る。
人間は好きにならない。俺を捨てたのも人間。
俺が猫だと知ったら、きっとまた捨てられるから。
「一生、その言葉だけ聞こえない」
「じゃあ、耳元で言ってやる」
逃げるから、追わないで。
二度と俺のことを好きだと言わないで。
情熱的な目が、俺には強烈な悪意にしか感じられない。
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