1045人が本棚に入れています
本棚に追加
「し、仕事だよ。仕事で疲れて帰ってきた保護者に、愛想わるく接するわけないでしょ」
「俺だって仕事して帰ってきた。俺にももっと笑えよ」
「……わかりました!」
なんで睨みつける人にまで笑わないといけないんだ。実朝さんはにっこり、こっちも優しくなる笑顔なのに、君は全く笑わないじゃないか。
いつも怒った顔で、こっちを睨むだけのくせに。
「では、失礼しますね」
籠をレジに持っていく。暗にもうついてこなくていいよって意味だった。
なのに彼はあろうことかお金を払った俺の品物を袋ごと奪った。
「ちょ、いい加減にしてください」
「重いから持ってやる。幼稚園の裏だろ、送る」
「良いです。俺は今日からあそこには帰らないんですってば」
奪い返した後、後ずさる。
この人、強引すぎる。
そしてとても、眉をしかめたくなるような。――嫌なにおいがする。
体臭とか香水じゃない。
けれど、逃げ出したい、そんな危険な匂いがする。
「失礼します」
最初のコメントを投稿しよう!