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距離を取ってから、すぐにマンションの一階へ走った。
なんなんだろうか。なぜ、怖い顔で親切に荷物を持とうとしたんだ?
「おい」
しかも、なんで一階まで着いてくるの。ストーカー?
「……あのう、申し訳ないんですが俺、もう今は仕事中じゃないんではっきり言いますが、俺、人間が大嫌いなんですけど」
はあ、と言いたくもない本心を吐き出してしまう。
「おじさんとおばさんは好きだし、子どもたちも大人にはない純粋で素直な心を持ってるからまだ関われるんですが、俺、――あなたみたいに何を考えてるのか分からない人間は好きじゃ、ないです」
フリーズ。
彼の様子を例えるなら、この言葉がぴったりだった。
まさに固まっている。ちょっと、人に話すには重たい話だって分かってるし、理解はしている。空気を読めない発言だろうから誤魔化してる。
誤魔化していたのに、――強引に近づいてきたこの人が悪い。
「俺、おじさんとおばさんの家に捨てられてたから。だから人は嫌い。ので、お願いですから仕事以外で関わらないでください」
「……その話は、ちょっと待って」
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