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清伍くんが言い終わらないうちに、エレベータに飛び乗って、ボタンを押す。
早く閉まれ、早く閉まれ、と願うが叶わない。
にゅっと伸びてきた清伍君の手が、ドアの間に挟まった。
「お前、人の話を最後まで――」
「清伍君は、言葉が乱暴だから、怖いんです!」
突然の言葉にパニックになってしまった俺は、つい正直にそう言うとドアを塞いでいた手を払いのけた。
閉まる瞬間、はらいのけた手が痛かったのか、苦しそうな顔をした。
「ご、ごめっ――」
謝る前に、エレベーターは上へと上がっていく。
ドアに手を置きながら、俺は唇を噛む。
いや、いい。暴力的でがさつで嫌な奴だと思われた方が、いい。
そうすれば、荷物を持とうとか親切心が働いて近づいてこないだろう。
彼には悪いけれど、俺は人と少し違うから。
だから嫌われた方が気が楽なんだ。
ちょうど七階に着く。
振り回してしまったコンビニ袋を両手に抱きしめながら、俯き加減でエレベーターを降りた。
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