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俺が通路に出たと同時に、がちゃりとドアが開く音がした。
「ほうら、義仲。お寿司が来たよ」
「おなかすいた、おなかすいたあ」
「あっ」
玄関のドアが開いた瞬間、むわっと焦げ臭い匂いが流れ出てきた。
それと同時に、義仲くんをあやす実朝さんもいる。表情は困っているのが笑顔が下手くそだ。
けれど上着を脱いだだけのスーツ姿、格好いい。
「あ、あいつ、せんせいだ」
「よ、よっちゃん」
兄弟で口が悪いよなあと思うも、実朝さんに気づかれてしまった。
「風月先生」
理事長も園長も美井って名字だから、俺のことを下の名前で呼んでくれる。
暖かい、あなたのその優しさや気遣いが今は嬉しい。
「あの、違うんです。親離れしようと、今日から引っ越してきまして、その」
「おにぎり、おにぎりよこせ!」
「えー、じゃあお隣さんですか? 男三人でうるさいと思いますがよろしくお願いいたします。ああ、先生が隣ならホッとします」
笑顔の実朝さんに抱き着きたくなったが、義仲くんに袋を奪われてなんとか逃れた。
「うわあ、さけ、さけ、さけ、おにぎり一つだけか」
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