一、 一人暮らし始めます!

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「ぱぱ、ろうかにおゆが漏れてる」 「ああ、お湯の線を閉め忘れてた」 「はあ!? ここの風呂、全自動じゃねえかよ」 「ぱぱ、洗濯機ガンガン言ってるよ」 「あああ、大変だ。靴を洗ってたんだ」 「おま、靴洗える洗濯機は、狭いから持ってこれなかったろうが。っち」 実朝さんの慌てて走り回る足音と清伍くんの怒鳴り声に、義仲君が不安そうにおにぎりを見つめていた。 「……」 今の隙に部屋に逃げ込めば良かったのに、俺はなぜかその焦げ臭い部屋の中に入ってしまっていた。 「ぞうきんはありますか?」 「……先生」 実朝さんが高給そうなタオルで床を拭いている。 「俺がしますから、不安そうな義仲くんの傍にいてあげてください」 義仲君のためだと、暗に言い訳がましく言っているような気がしたが、しょうがない。 他人に関わらないように一人暮らしをするために、最初だけ。最初だけだ。 ぞうきんは無かったようで、俺は自分の部屋に帰ると段ボールの上に置いてあったぞうきんを持って戻ってきて床を拭いた。 そしてキッチンを見ると、焦げ臭い原拠の鍋を発見。 鍋の中は焦げて真黒で形を持ってはいなかった。 「野菜の水分だけでカレーを作ろうと思って」 ははは、と実朝さんが笑う。 「水分って野菜は何を入れたんですか?」 「玉ねぎとじゃがいもと人参だよ」
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