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「今日帰るでしょ。俺の前払いのバイト代、今日までだもん」
「山田くん……」
「まあ、俺、一応親の扶養内だから、今日までのバイト代以上もらうとやばいから、……ほんと今日でバイト終わりだから」
「……ありがとう」
俺みたいな捻くれた奴と、最後まで守ってくれて。
何度感謝しても足りない。
「そんな可愛い顔で微笑まれたら、許すしかないっしょ。あーあ。バイトもできないし、真面目に大学戻るかなあ」
最後まで偽名だった。
けれど清伍くんも実朝さんも彼の正体を教えてくれなかったから俺も聞かない。
一度だけ、義仲くんが『やまだのにいには、ねこみたいだよね』と俺に耳打ちしてきた。
彼も丸い尻尾だって言っていたし。
……でもウサギだって俺には言ってたし正体を言えないってことはそういうこと何だろうから、知らないふりをする。
彼が認めて、一族のことを俺の耳に入れるってことがないあたり、きっと結果は変わらないから。
「あ、にいに!」
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