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「……」
俯いて項垂れてしまう。絶望というのか、逃げられないと分かった瞬間、抗う気持ちが無くなった。
「来いよ」
「清伍くんって、威圧的で怖いね」
「――は?」
「口調が乱暴で、嫌われてるみたいで、いや、嫌われてるのか。強く否定されてる気分になる」
嫌い。近寄らないで。仲良くしてとは頼んでないよ。
入っていいと、近づいていいと、俺が決めたラインに土足で入ってこないで。
「せんせい、ばか!」
張り詰めた空気の中、両手でおにぎりを食べていた義仲くんが大声を上げた。
「――え?」
「しょうにいは、パパより優しいししっかりしてるし、こわくない! せんせいは、まったくわかってない! おれ、せんせい、だいっきらい!」
「え、ええ?」
「おすし食べなくていい。ガリばっかたべてろよ!」
「……いや、いいよ。帰る」
すり抜けようとした俺の腕を、彼が掴んだ。
「にゃっ」
咄嗟に叫んでしまったが、清伍くんは横を向いて『悪い』と謝った。
「俺が出ていくから、大好きな親父と食べてくれたらいい」
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