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「……俺が出ていくからいいです」
「良いって、お前は――いや、先生さんは、そこに座ってろ、――座ってくれていい」
言葉を言い直しつつも頭を掻きながら出ていこうと背を向ける。
その姿に悪い人ではないのかと、一瞬ほだされそうになった。
なのに、それは急に壊されてしまう。
「いやあ、重い。八人前ってこんなに重いんだねえ。よいしょ」
寿司桶を四つ持って現れた実朝さんに廊下を歩くのを阻まれる。
「清伍、座りなさい。ほら、そっち。ほらほら、おしぼりお配りして。先生、雲丹好きですか?」
「あの」
「もーさ、好き嫌いしてないでさっさとすわれば? にいにもパパもこまるでしょ? くうきよんで」
おにぎりを食べたらしい義仲くんが、俺の手を引くと椅子に座らせた。
「……良い子にたべないなら、せんせいがぱぱを好きなこと、ばらすよ?」
「よ、よっちゃん」
「にいにをいじめたバツ。さっさとたべてかえれば?」
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