一、 一人暮らし始めます!

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「やめろ、先生が困ってるだろ。自分で食えよ」 そう言って、清伍くんが取り皿に何個がお寿司を選んでくれた。 雲丹、サーモン、トロ、玉子。 どれも美味しそうだ。 「あ、あ……ありがとう」 戸惑いつつも受け取った。実朝さんが嬉しそうにそれを見ていた。 「先生みたいに可愛い人が一緒に食卓にいると、こう、華があるね」 「か、かわいい……?」 自慢ではないが、おれはそこらへんにいる至って普通の青年だと思うんだけど。 「清伍も、時間を作ってまで先生のエプロン姿を――うぐっ」 「黙って食え。親父の好きなトロだぞ、ほら、口の中で溶けろ」 「――――ううっ」 「わ、清伍くん、やめてあげて。実朝さんが苦しそうだよ」 何か言いかけていた実朝さんの口にお寿司を放り込むなんて、なんて怖い人だ。 「実朝さんに水を」 「先生が買ってきた、これならあるよ」 義仲君に渡されて、受け取ったそれはお酒だった。 しかも何回か落として、振られていたのだろう。 開けた瞬間にプシュッと飛び出るほどに。 「わわーっ」
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