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飛び出してしまった俺の手には、ちゃっかりビールが握られている。
残っていた半分ぐらいのビールを飲み干して、漸く自分の部屋に戻ることができた。
引っ越したばかりで、最低限のモノしかない。
すぐにあのおじさんたちの家に戻れるように、ほとんど家に置いてきた。
ので、毛布一枚とソファ、そして小さなサイドテーブルとテレビ。
五城楼家は家具も豪華だったから狭く感じたけど、俺の部屋はそんなに狭くない。
一人暮らしには広く感じられた。
服を脱いで、脱衣所の鏡に映った自分を見る。
お酒を飲んで、耳を刺激され、すっかり猫の耳が出てきてしまっている。
普段は人間みたいな普通の耳なのに、気が緩むとこうなる。
シャワーのお湯を調節しながら、ズボンも脱ぐと情けない短い尻尾が見えた。
三毛猫の雄は生まれない、生まれるには遺伝子レベルでの異常が起こったとき、とされている。
おじさんとおばさんの家の前に捨てられていた理由は、おじさんたちの幼稚園が人外の子どもを預かる幼稚園だからだ。
事情を知らずに普通の子も入園してくる場合もある。義仲くんみたいに、親の事情とか、ね。
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