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……え?
ドアの前から声がして思わず動きが止まった。
「鍵かけてねえから、不用心すぎる」
「……あ、もしかして見張っててくれたの?」
返事はなかったけれど、代わりに足音が聞こえてくる。
「おやすみ。俺が隣で悪かったな」
「ま、まって、いや、あの、あれ」
耳が隠れない。仕方ないのでタオルを頭にかぶせてからドアを開けた。
するとほとんど進んでいなかった清伍君がこちらを見た。
「――っなんて格好してんだよ」
「え、お風呂上がりだから、だよ」
ズボンも穿いているし、上は着てないけどタオルで隠れてるはず。
「あり、がとう。でも俺、男だからそこまでしなくても大丈夫だし」
「俺が嫌なんだよ。馬鹿じゃねえの」
また怒鳴られて、思わず目をつぶってしまった。
すると、小さく『悪い』と謝られた。
「いいよ。俺、一応捨てられた育児放棄の子どもだからさ、おじさんとおばさんが甘やかして怒らなかったせいか、――怒鳴り声に萎縮しちゃうんだ。君が怖いだけが理由じゃない。じゃあ、おやすみ」
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