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早口で説明した後、急に手を掴まれ再び固まってしまった。
「……清伍くん?」
「あんたから、良い匂いがする。胸を鷲?みされるような、振りほどけなくなるような甘ったるくてきつくて、苦しくなる匂い」
「え?」
「それなのに、俺には絶対に笑わない。俺が来ると職員室に逃げる。見つめることも許されない。――そのせいで思いは募る。どんどん膨れていく」
「せ、清伍くん、痛いっ」
捕まれた手を解き、玄関に逃げ込もうとした。
けれど彼もいっしょに入ってくると、玄関の鍵が重く響いてしまった。
彼が後ろ手で鍵を閉めて、俺を玄関の壁に追い詰めて見下ろしてくる。
俺の本能が、彼から逃げろと言っていた。
今俺の秘密は、タオル一枚。その下に簡単に見られてしまう。
「や、だ。来ないで、清伍くん、来ないで」
壁に追い詰められて必死でタオルを握りしめる。
実朝さんとは正反対。
強烈な悪意で睨んでくる彼が、俺は怖かったし好きではなかった。
「怖がるなよ」
苦しそうな泣き出しそうな声と共に、抱きしめられた。
怖い、嫌い、近寄らないで。
けれど、抱きしめられる。触れてくる。
「嫌いなわけじゃねえよ。分かんねえのかよ」
押し付けられたのは胸の鼓動じゃなくてなぜか下半身で――?
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