一、 一人暮らし始めます!

2/34
1041人が本棚に入れています
本棚に追加
/199ページ
昔々、子どもが大好きな夫婦がいました。二人は美井学園の幼稚園の園長と副園長です。 その二人が、門の前にタオルに包まって捨てられている俺を見て、驚いたそうです。 三毛猫の雄は珍しい。捨てられるなんておかしいのではないか、と。 けれど、二人は捨てられた理由をすぐに理解しました。 服を着せ、温かい部屋で抱きしめてあげると、その子猫は可愛い男の子になったのです。 まだ赤ん坊に毛が生えたぐらいの年齢だったとか。 俺は、――その以前の記憶が全くない。 寒くて誰かに気づいて欲しくて泣いていた。 抱きしめてくれたのが、おじさんとおばさんだと認識した。 俺が覚えている一番古い過去は、そこなのだ。
/199ページ

最初のコメントを投稿しよう!