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昔々、子どもが大好きな夫婦がいました。二人は美井学園の幼稚園の園長と副園長です。
その二人が、門の前にタオルに包まって捨てられている俺を見て、驚いたそうです。
三毛猫の雄は珍しい。捨てられるなんておかしいのではないか、と。
けれど、二人は捨てられた理由をすぐに理解しました。
服を着せ、温かい部屋で抱きしめてあげると、その子猫は可愛い男の子になったのです。
まだ赤ん坊に毛が生えたぐらいの年齢だったとか。
俺は、――その以前の記憶が全くない。
寒くて誰かに気づいて欲しくて泣いていた。
抱きしめてくれたのが、おじさんとおばさんだと認識した。
俺が覚えている一番古い過去は、そこなのだ。
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