一、 一人暮らし始めます!

30/34
前へ
/199ページ
次へ
「俺だって、本当に無理。他人とか本当に無理!」 「そんなこと言って、親父には心開いてるじゃねえかよ。信じられねえ」 「仕事だから。いい加減にして。俺の家から出て行ってっ」 ずるずると押さえていたドアに背中を這わせながら座り込む。 鍵をかけているけれど、侵入してきそうで不安だった。 何故か、心が不安で発狂してしまいそうで、怖い。 「俺は、あんたに多分、ずっと笑ってほしかったんだと思う。あんたに、俺を見てほしくて、執着してしまったんだと思う」 「聞きたくない。止めてってば」 「……悪い。でも俺は、納得できないから諦めない」 「やめろってば!」 ドアを叩く。出て行けと、うるさいと、拒絶したくて。 「……」 ドアの向こうの彼はどんな表情をしているのか俺には分からない。 けれど小さく息を飲む音と、遠ざかる足音だけが聞こえてきた。 ――最悪だ。
/199ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1045人が本棚に入れています
本棚に追加