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俺が傷ついてるからって、誰かを傷つけていいわけじゃないのに。
けれど俺はきっと、自分が傷つけられた分だけ暴言を吐いて彼を傷つける。
関わらなければ、そんなこともないのに。
「風月せんせーい」
「……?」
「聞こうと思ったわけじゃないけど、お風呂場から聞こえちゃって。ごめんね、……一人で泣かないで」
玄関の向こうから聞こえる実朝さんの声に、俺は鍵をあけて廊下へ出ていく。
耳は、隠れてくれないのでタオルをかぶったまま。
「実朝さん……」
玄関から少しドアを開けて顔を覗かせると、心配そうな顔の実朝さんがホッと胸を撫でおろした。
「お寿司、結局沢山余っちゃったんだ。タッパに詰めてみたんだけど、良かったら食べて」
一人分ぐらいのお寿司が入ったたっぱを渡され、何故か素直に受け取ってしまった。
人は嫌いなのに、実朝さんの優しさにはなぜか縋りたくなる。
「俺……」
「良かった。風月先生みたいに可愛い人は、泣いたら駄目だよ。泣くなら、私が抱きしめて隠してあげるよ」
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