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「……へえ」
「先生は、うちの清伍が苦手ですか?」
「ぶっ」
にこにこと優しい笑顔で、いきなり急所を狙ってきた発言に、思わず狼狽える。
「きらいって。かかわりたくないんだって」
「よ、よっちゃん、や、あははは。俺、人見知りなんで」
「ああ、そうでうしょねえ。大きな壁を作りますよねえ」
図星だ。というか、実朝さんって普段少し抜けてる感じだけど、人をよく見てるのかな。
そりゃあ会社経営されてるし、頭が切れるに決まってるけど。
「清伍は、本当にいつも先生の話をするんですよ。一言だけなんですけどね。『今日はあの先生じゃなかった』『今日はいた。逃げられたけど』みたいに。他の先生のことは言わないのに。分かりやすくて」
クスクスと笑う実朝さんに、思わず顔を下に向けてしまう。
早く幼稚園に着けばいいのに。
胸が苦しくて、嫌になりそうだ。
実朝さんには、俺の汚い感情を見せたくない。
知られたくない、とずるい考えばかり浮かんでしまうんだ。
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