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「そうなの?」
「パパはイケメンだから、誘いを断られたことないから」
「あはは」
冗談としか感じられないんだから仕方ない。
「さーって、全部の部屋の鍵を開けて外を掃くから忙しいぞ」
「おもちゃだしてあげるよ」
「ありがとう!」
実朝さんも、……清伍くんもいない。
そう思ったら皮肉にも、心が緩み緊張が解けていく。
そうだ。俺は二人の前では緊張してしまうんだ。違う意味で。
「あ、そうだった……」
オモチャの棚から、オモチャを出して保育環境を作ってくれてる義仲くんを見ながら、実朝さんの話を思い出す。
義仲くんが狸のクォーターって件は、おじさんたちに伝えておくべきなのかもしれない、と。
誰か出勤してきたらちょっとだけ当番を交代してもらって報告に行こう。
食べれなかった朝ごはんのせいでお腹を鳴らしながら、誓う。
「ああ、クォーターは報告義務ないからね。一応家庭調査票に追記しといてもいいわよ」
「ほーい」
「職員室でバナナを食べる先生なんて初めて見たわ。昨日はちゃんと自炊した? 引っ越しそばでも食べた?」
当番を5分だけ変わってもらったので急いで報告しつつ、裏の家からテーブルにおいてあったバナナを持って帰ってきて食べる。
が、おばさんは怒るどころか食事の心配までしてくれている。追い出したくせに。
「チューハイとお寿司の出前食べたよ」
「自炊できなきゃ帰ってこれないからね」
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