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「……あのさ」
「なあに?」
「俺の親って誰とか分かったりしてんの?」
「呑気にバナナ食べながら言う台詞じゃないわよねえ」
おばさんが眼鏡を置くと、肩に手を当てて首を捻る。
作業を終えたのか、次はエプロンを着て早番の手伝いに回ってくれるらしい。
「貴方を養子縁組で提出するときに、一応調べてみたのよねえ。まあ手掛かりはなかったのよ。でも」
「でも?」
「三毛猫の雄なんて、いくら遺伝子の異常だのなんだ言われても血統書でしょう? 生まれるとしたら名家じゃないかって、人外課の人が言っていたのよねえ。日本で猫科の名家って限られてるから」
「すげー。俺、名家? 五城楼家ぐらい?」
「五城楼家に適う家柄なんて日本には少ないんじゃないかしら、さ、バナナ食べ終わったら名家の子らしく頑張りなさい」
体よく追い出されてしまったけれど、仕方ない。
名家出なら頑張るしかない。
「でも俺は、おばさんの子どもだけどね」
「……調子いいんだから」
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