1045人が本棚に入れています
本棚に追加
「大丈夫。選ばせてあげるよ。珍しいペットを欲しがっている金持ちのバアサンか、子猫の繁殖ブリーダーの研究所か、はたまた捨てた本家に会いに行かせてやってもいい。どこに連れて行っても大金が確実だ」
「や、やだ、はなせ、はなせーっ」
足を踏んだり肘を当てるがびくともしない。
それなのに、急に髪を引っ張られたかと思うと男が後ろへ倒れた。
大事な俺の髪を何本かぶちぶちと抜きながら。
「おい、ダイジョブか、先生!」
「……清伍くん」
男を蹴りあげて右手を捻ると、大きな音と共に男の悲鳴が聞こえた。
「な、なにしてるの?」
「流石に体格じゃ勝てないから、腕一本折った。先生、これ」
呻く男に跨ったまま、清伍君が俺に何かを投げてきた。
「あっ」
車の鍵だ。――もしかして俺が荷物を取り忘れたのに気づいて戻ってきてくれたのか?
「車の中に隠れとけ。俺はこいつと話をつけるから」
「う、うん、あっ」
すとんと腰が抜かて座り込んでしまった。
起とうとしても上手く足が動かなくて、よく見ると足が大きく震えていた。
最初のコメントを投稿しよう!