一、 一人暮らし始めます!

5/34
1042人が本棚に入れています
本棚に追加
/199ページ
「なんでだよ。俺、結婚しないし猫みたいに気楽に生活したいのに」 「だったら一人の方が楽ですよ」 おばさんは、一回言ったことは撤回しない。 確かに幼稚園の仕事は忙しい。忙しいのに感けて、家事は一切しなかったし、家に帰ったら炬燵で丸くなっていた。 理事長になっておじさんも忙しくなったし、園長として激務のおばさんも大変なのはわかっていた。 だけど、パンツ一枚で散らかした部屋で眠っていた俺に対して、自立しろって酷い。 勝手にマンション探してきて契約して、ほぼ俺の意見なんて聞かずに引っ越し日も決めちゃって。 「貴方は、まずは一人で生活しなさい。料理や洗濯は私の真似をして上手でしょ」 「そーだけど、でも、……おばさんたちと離れたくないじゃん」 今まで賑やかな家で満足してたのに、急に一人で寝ろなんて寂しい。 「……風月」 もう一押しだ。俺の不安げな顔に、おばさんの弱点である過保護という名が顔を出す。 けれど。 「すいません、遅くなりました」 低くて艶っぽい声に、おばさんとの会話を放り出して外へ飛び出た。 「おかえりさない、五城楼さん!」
/199ページ

最初のコメントを投稿しよう!