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「あ、せ、清伍君」
「お腹空いただろうと、弁当買ってきたんだけど」
「や、あの、まって、その」
「うーん。あと三時間」
俺の膝の上で寝返りを打つ実朝さんに、視線だけで殺しかねないような風貌の清伍君が大きく舌打ちする。
そしてテーブルにまた熱々のお弁当が入った袋を置きながらも、包帯でぐるぐる巻きになった手を隠す様に俺から背を向けた。
「清伍君、その手……」
「全然大したことねえよ。五城楼家の医師だから大げさに包帯巻きやがって」
「でも、いっぱい血が出てたし」
「はい。七針縫いました。親指と人差し指の間もぱっくり切れております」
「精華!」
実朝さんの秘書が、玄関に立っていたが急に座り込み土下座しようと頭を下げる。
「やめろってば」
「やめません。この精華、実朝さんに成人まで面倒を見てもらっていた身で、ご長男であられる清伍さんにお怪我させて、のこのこ生きているなんて」
「ややめてください、貴方は悪くないです。俺が、俺が早く逃げなかったからです」
「いたっ」
慌てて彼女の元へ駆け寄った際に膝の上の実朝さんを突き飛ばしてしまった。
けれど、それが本心だ。
「俺が悪いんです。貴方は何も悪くない。だから、そんなことしないで」
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