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「でも……」
「うっせーな。お前、もう帰れ。さっさと帰れ」
半ば強引に外へ追い出すと、ソファで気持ちよさそうに眠っている実朝さんと、俺と彼の間に重い沈黙が流れた。
「俺にできることは、ありますか」
「は?」
「俺のせいで巻き込んじゃったし、逃げれなかった俺のせいだし。俺、清伍くんの手が治るまで、……ここの家事を手伝うよ」
逸らされた清伍くんの顔が見たくて、覗き込む。
すると、怒鳴り散らそうと大きな口を開けてすぐに力が抜けたような顔で俺を見た。
「……弱みに付け込むぞ。裸になって、タオルで拭けっとか意地悪言うかもしれねえぞ」
「俺のせいだし、清伍くんがそうしろって言うなら……何でもするよ」
どんなことを言われるのか、ちょっとだけ怖くて視線を泳がす。
けれど、あんな手にしておいて何もしないわけにはいかない。
「何もしねえけど、――あいつが捕まっていない以上俺もお前を放っていけない」
「うん。ごめん、今日は怖いからできたら、床でいいから此処で寝かせてほしい」
「――謝ったな」
あまりに低い声で、驚いて後ろへ退いてしまった。
清伍くんの声が、今にも俺を飲み込んでしまいそうなほど唸ったように低い声だったから思わずそう思ってしまったんだ。
「いい。そんなに怖がられたら、俺だって毎回傷つきたくねえんだ。無理強いしたくない。今回のことは、貸し借りなしにしよう」
「怖がらない。絶対に怖がらないようにするから! だから、――俺に家事は全部させて」
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