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義仲くんを抱っこしている、世界一素敵なパパコンテストぶっちぎりであろう実朝さんに笑顔で話しかける。
すると、優しい顔が綻んだ。
「ありがとうございます。今日は間に合わないかと思いましたが、急いで取引を終わらせてきたんで、労い嬉しいです」
「わあ、取引を終わらせちゃうなんて、格好いいですねー」
渋い皺も、低い声も、ごつごつした指先も、ちょっとタレ目の目も。上品なスーツも。
駄目だ。実朝さんの良いところを上げたらきりがない。
実朝さんは義仲君のバッグと、義仲君も抱きかかえながら辺りを見渡した。
「どうされたんですか?」
「清伍が来ませんでしたか?」
「……え?」
「息子に取引が長引いてるから、可能なら義仲を迎えに行ってほしいと連絡したんだけど――」
その言葉に、身体が固まった。
あの、怖い人がもしかしたら来てしまう?
「さ、さあ。ご連絡してみたらどうでしょう。俺、職員室で仕事がありますので」
そそくさと逃げようとしたが、既に遅かった。
門のところに、スーツ姿の男が立っている。
「なんだよ、親父いるじゃん」
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