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鋭い目つきだ。ナイフみたい。
切れ長で、男らしいかもしれないけど俺は実朝さんみたいにふわんとした優しい目が好き。
しかも、どっかの有名料理店の副店長とか言ってた気がするけど、金髪なんだ。
あの年で金髪とか、不良こじらせて大人になりきれていない。
ピアスだってしてるしなんであんな怖い人が、実朝さんの息子なんだ。
「おかえりなさい。お兄さんも来てるのね」
「よかったねー。よっちゃん」
「ありがとうございました」
無表情だけど、先生たちにきちんと挨拶はするんだよね。
俺にはしないけど。
「じゃあね、よっちゃん」
俺もよっちゃんに手を振り、実朝さんに会釈してそそくさと職員室へ逃げる。
「……っち。へらへらしやがって」
ほら。俺にだけ、毒を吐く。
俺はその毒が怖い。
「風月先生は、優しいしいつも笑顔でいい先生だよ」
ああん。実朝さん、優しい。
俺なんかをかばってくれて、嬉しい。
「誰にでも媚びを売ってるだけだろ」
切り捨てるような、付け離すような言い方。慣れたとはいえ、人からあれほど嫌われるって、あまり心に良くはない。
胸が締め付けられて、吐き出しそうな嫌な気分になる。
職員室に逃げ帰って窓からちょこっと様子を伺ってみた。
義仲くんを抱く実朝さんは、やっぱり素敵だ。
けれど急にこっちを振り返って俺と目を合わせた息子さんは苦手。
思わず目が合ったのに逃げてしまった。
何故俺は、あれほどまであの人に嫌われなきゃいけないんだろう?
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