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警戒心を剥き出しにして蜷局を巻く蛇のようだ。彼は私の頭から爪先までを舐めるように観察すると、今度は興味を失ってしまったのかあまりに素っ気なく視線を外した。彼のその態度に、私は少なからず呆気にとられていた。
彼は私の勤める高校の生徒だ。四月の入学式を終えた後、五月半ばの妙な時期に編入してきたのをよく覚えている。これだけ派手で目立つ男だ、更には突然の編入で、彼は学校中どこへ行っても注目の的だった。しかしそんな奇抜な(理不尽な暴力のような勢いの)見てくれとは裏腹に、学校での彼はとても人懐こかった。少なくとも私にはそう見えた。生白い顔にはいつも軟派な笑顔を貼り付けて、女生徒にも男子生徒にも分け隔てなく、過不足なく親切に振る舞った。その愛嬌じみたものに誰もが引き寄せられるのだろう、彼は運動部の早朝練習に誘われるがまま、おとなしく参加していることもしばしばあった。活力を漲らせる肉体はミケランジェロの彫刻のようにととのい、美しく磨き上げられ、そしていやらしく生々しい匂いをさせた。勢いよく体内を流れる血潮が、その皮膚を透かしてこの目に焼き付く錯覚にまで襲われる。瑞々しく眩しく、まだ若い果実のような肉体は、
恐らく彼を見るすべての者の心臓を強く震わせただろう。
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