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「たまに無表情になるときがさ、なんか鳥肌立つくらい気味悪いことがあるんだよね、あの外見だし。いつもにこにこしてるから、余計にそう見えるだけだろうけど」  皆元は早口でそう告げると、時間がやばいから、と慌ただしく校舎を駆けて行った。予鈴が鳴り、グラウンドにいた生徒たちもぞろぞろと連なって教室を目指し歩いていく。その中にひと際異彩を放ち頭ひとつもふたつも飛びぬけた彼を見つけ、なかば無意識に目で追った。動き回ったにも関わらず涼し気に目を細める姿は恍惚の匂いを漂わせ、そしてそれは私へと伝染する。次の瞬間には彼と視線が絡み合い、鋭い眼光を正面から受け止めた。ぞくりと背中が粟立った。少し気味が悪いよね、そう言った皆元の声が脳内で再生された。
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