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 毎朝目にするグラウンドで輝く姿とはまるで違って、私の前での彼は表情を殆ど動かさない。それが私の心に波風を立てた。放課後の屋上、斜陽に赤く染まる彼も、逆光に陰る彼も美しかった。とてもとても美しかった。目尻のピアスが光る。私は再び手を伸ばす。その腕をとられて、当たり前のように二度目の口づけを交わした。唇を離せば、間近に彼の顔がある。目尻、眉尻、鼻の横と口の端、彼を彩るすべてが鮮やかで、それらを司る彼は、随分と疲弊しているように見えた。  それから毎日、気が滅入るほど同じ日々が続いた。朝起きて仕事へ行き、帰って寝る。それを繰り返すだけの日々。それが悪いことではないのを知っていたから、肉体的な疲労以外に別段何を思うでもなかった。校内で彼を見かけることも勿論あったが、だからといって特別なやりとりがあるわけでもなく、ひたすらに淡々とした日常が続いた。  今朝は早くから雑務に追われ、それが一段落すると今度は怪我人や病人が引っ切り無しに訪れてまともに休む暇もなかった。放課後になりようやく一息ついて、煙草を吸おうと屋上を目指せば、道すがら廊下の窓にぽつりぽつりと雨粒が触れた。雨では屋上で煙草を吸うこともできない。保健室へ引き返し、帰り支度を整える。きっと今日はついていない日、こんな日はさっさと帰ってしまうのが良い。折り畳み傘を開いて校門を抜ける。駅に向かうに連れて雨脚が強まった。濡れずに帰るのはどうやら無理があるらしい。     
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