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日曜がやってきた。日曜の夜は、私にとって特別な日。数か月に一度、大切な人から不意に連絡が来るのは決まって日曜の深夜近く。こういう時に限って、いつもその人は連絡をしてくるのだ。誰かに少しばかりうつつを抜かし始めた頃に。こちらの様子なんて少しも知らないくせに、いたずらに。 「もしもし、どうしたの?」 着信に気付くと数回のコールの後に通話ボタンを押して、私はいつものように電話に出た。 「べつに、どうもしんけど」 その声を、空気感を、ひとつだって取りこぼさないように味わいながら聞いていた。 「なに、あたしの声が聞きたくなっちゃったの?」 からかうように、けれどそうであってほしい気持ちも乗せて口にする。 「ふざけんな、…そんなんじゃないし」 照れ隠しなのかなんなのか、素直じゃない彼の本心はいつだって読めない。けれど、私は知っている。普段会わない、共通の知り合いもほとんどいないような人間が連絡をしてくるなんてときに、用事などあることはそうそうない。変なビジネスの勧誘や、お金を貸してほしいというのを除いては。そして、彼が私にそんなことをするはずもないことも、もう私は知っている。 「飲んでるんでしょ」 「は?飲んでないし」 「え、珍しいね。あたしに電話してくるときは、いつも飲んでる時なのに」 「…飲んでるけど」 酔っぱらいの戯言を、それでもすべて愛おしく思いながら聞いていた。 すべての物事を自分に置き換えるのはちがうのだろうけれど、お酒が入ると人恋しくなるものだと思う。そんなときに、声を聞きたいと思ってもらえるような位置にいるんだと思うと、それだけでたまらなく嬉しくなった。 「嫌なことでもあったの?」 職場がずっと苦しくて、でもどうにもできないまま、ひたすら必死にもがき続けているらしい彼を、ずっと応援してきた。遠く。ずいぶんと遠くに住んでいて、近くでいつでも支えられるような環境にはもういない彼。 「飲むのも、きついな」 その言葉で、その飲みが発散のためでなく仕事上の付き合いなのだとわかる。 「仕事、大変なんだね」 「そりゃな。お前も、大変なんだろ?」 「ぼちぼちね」 仕事内容よりも人間関係で揉まれているのは、私たちが似ているところ。成長したいと地団駄踏んで、真面目すぎるが故に許容できない不器用な私たち。
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