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「努力しました。自分で言うのはって思うけど。イギリスに引っ越してから、胸を張って言えるくらいには毎日。毎日、彼女が好きになってくれるような人間になれるように」
中学生になった彼女の写真。
真新しい制服を着て、少し照れたように微笑む彼女は大人っぽくて可愛くて。
写真の女の子に恋をした。
好きの形が決まった瞬間だった。
ずっと続けていた手紙のやり取りを辞めた。
彼女はいつだって自分より先を歩いている。
早く追いつかなきゃ。次会うときは自信をもって隣に並べるように。好きになってもらえるように。
まあ、そう簡単にはいかなかったけれど。
「俺、いちかと一緒にいるとなりたい自分になれるんです。どんなことだって立ち向かっていける自分になれるんです。それってすごいことで」
「皐月……」
「いい加減な気持ちじゃありません。俺が未熟で、泣かせてしまうこともあるかもしれないけど。いつだって、いちかのことが大切なんです」
皐月は改めて背筋を伸ばし、頭を下げた。
「いちかさんとのお付き合いを認めてください。お願いします!」
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