二度目の初恋

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「有栖川くんって損な性格だよね」  若葉の言葉に、樹はムッと眉根を寄せた。  * * *  放課後。  教室の窓から吹く風に前髪を揺らしながら、樹はぼんやりと空を眺める。  苦手な英語の小テストで酷い点を取ってしまい、強制的に渡されたプリントが終わるまで帰ってはいけないと、教科担任からお達しが下ってしまった。  教科書やノートなど、全てを活用していいからとにかくプリントを埋めてこいということだが、そもそもそれらがなにを言っているのかわからないのだから使いようがない。単語もどれから調べようか。気が遠くなりそうな量に辞書を開くのも面倒くさい。 (これでも俺、英検持ってるんだけどなぁ)  頬杖をついた掌にべったりと頬をくっつけ目を閉じる。 (五級だけど)  心の中で呟いて、ふっと笑った。  今日は天気もいいし暖かい。絶好のお昼寝日和に樹の頭はゆらゆらと泳ぎ出す。  とうとう意識が深海に潜りだしたとき、ガラッという教室のドアが開く音がして目を覚ました。 「あれ~。有栖川くん? そんなところで何やってんの?」
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