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片足を椅子の上に乗っけ、床にお尻をくっつけた樹はパチパチと瞳を開け閉め。
近づいてくる人物を見上げ、ほっと息をついた。
「なんだあ。河合さんか~」
先生が来たと勘違いした樹は、慌てて姿勢を正そうとして椅子から転げ落ちたのだ。居眠りしていた罰である。
(アブナイ、アブナイ)
サボっていたとばれたら未だ真っ白なプリントに勉強ができないだけでなく、やる気すらないのか! と大目玉をくらうところだった。
大丈夫~? と若葉が手を差し伸べてくれたので、その手を取って立ち上がる。まあ、心配そうなのは言葉だけで、くすくすと笑われているのだが。
「先生が来たのかと思ってビクついちゃった。河合さんはどうしたの?」
「ん? 図書委員の当番だったの。有栖川くんは英語?」
机の上に視線を滑らせると若葉が首を傾げて聞いてくる。
「うん。先週やった小テスト。嫌な予感はしてたんだけどさ、今日返ってきて……」
「えっ! あの問題で本当に三十点割る人いたんだ!」
あんまりな言われようだが、若葉は本当に驚いているようで何やら考えるようにブツブツと呟いている。
「でもそっか。そんな点取った人がいるから放課後の居残りについて言ってたんだ」
「俺一人だけどね~」
若葉の様子から相当簡単な問題だったことが窺えた。現に教室には樹しか残っている者はいない。
(先生の顔、何となく呆れた感じだったもんなぁ)
授業中、名指しで残れと言わなかったのは先生の優しさか。
樹は今度こそ真面目に頑張ろうと丸まった背中を伸ばした。
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